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カルロス・クライバー/ある天才指揮者の伝記 [書籍]

アレクサンダー・ヴェルナー/著の「カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記」(上巻、下巻)を読んだ。
20世紀後半に生ける伝説と化し、今世紀に入ってからはほんの僅かの演奏会を行っただけで、
伝説のまま亡くなった名指揮者、カルロス・クライバーの詳細な伝記なので、楽しみにしていた。

確かに、今まで知らされていなかった彼の人生の詳細が語られている。
また、音楽メディアに断片的に掲載された、彼の武勇伝(演奏会や録音キャンセルの歴史)も
かなり詳細に語られている。

今回始めて知ったが、DGにミケランジェリとベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》の録音で
起用されたのがベルリン放送交響楽団だったこと(以前、雑誌にはベルリン・フィルと記載されていた)、
その前に実演で共演した際に、R.シュトラウスの「死と変容」が演奏されたこと(別のインターネット
サイトでは、シューマンの交響曲第2番とされていた)、など多くの実像が淡々と書かれている。

その他にも、若き日に多くのバレエ公演を指揮したこと(前期のサイトでは、「眠りの森の美女」を
ごく少数回振っただけとなっていた)、録音は残っていないが実際には多くの作品を振ることが
できたこと、プローベ(練習)の一部まで関係者の話から再現している。

また、彼のキャンセルにいたる行動を当時の関係者の話でうまくつなぎ、歌劇場などの既存
ビジネスの慣習に飲み込まれることを良しとしなかったカルロス・クライバーのひたむきさが
何度も何度も紹介されている。

残念なのは、翻訳のできが良くないことだ。
上記ベルリン放送交響楽団をRIAS交響楽団と名称変更前の名前で記載したのはご愛嬌ですむが、
演奏会で共演した歌手の名前をある者は苗字だけ、ある者はフルネームとバラバラに記載されて
いる場所が多い。(パバロッティやドミンゴなら苗字だけでもいいが、中堅の歌手は困る)
また、代名詞による記載の際に、「彼」って誰よ?と思うような日本語や年代の前後が逆転して
読めるような文章もあり、何度も混乱して読み返した。

偉大な父、エーリッヒ・クライバーの精神的な影響から抜け出せなかったのか、早く消耗して
晩年には老いた演奏に自分で我慢できなかったのか、早すぎる実質引退~隠遁生活に入った
名指揮者が、もう少し実演や録音で活躍していたら、音楽業界に与えた影響ももっと大きかったのに!










タグ:音楽 書籍
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